偶然がデザインを変えた。エルメス「オレンジの箱」の誕生秘話

(画像元:Hermès)
高級ブランドの魅力は、商品そのものだけではありません。
リボンを解く瞬間のときめき、箱を開ける音、手に伝わる質感。それらの体験すべてが「ブランドの世界観」を形づくっています。エルメスにとって、その象徴が“オレンジの箱”です。
しかし、この鮮やかな色は、意図して選ばれたものではなく、偶然の産物でした。
■戦時中の資材不足が生んだ「オレンジ」


(画像元:ランタンエルメス) (画像元:ランタンエルメス)
エルメス創業初期、商品を包む箱はベージュに近い上品な色合いでした。当時のハイブランドの常識として、「控えめであること」が高級の証とされていたからです。
ベージュやアイボリーは、静かな格調を表す“正統の色”でした。
しかし第二次世界大戦中、資材不足によりその紙が入手できなくなります。代わりに倉庫に残っていたのは、明るいオレンジ色の厚紙。「仕方なく使うしかない」そんな“やむを得ない選択”から、オレンジの箱は誕生しました。ところがこの偶然こそが、後にエルメスのブランドを象徴する革新へとつながります。
■デザインの力が「偶然」を「必然」に変えた

(画像元:ランタンエルメス) (画像元:fashionsnap)
オレンジ色は当時の高級品の常識から外れた異端の色でした。
それでもエルメスは、その色を否定せず、むしろデザインで美しく整えました。箱の中央に馬車のロゴを配し、茶色のリボン(ボルドゥック)で包み、サイズも製品ごとに緻密に設計。結果として、オレンジの箱は他ブランドとは一線を画す、圧倒的な存在感を放ち始めます。
「控えめ=上品」という既成概念の中で、あえて“目に残る上品さ”を成立させた。それは偶然に見えて、デザインの意志が宿った選択でした。
■差別化の本質は「色」ではなく「姿勢」
やがてエルメスのオレンジは、ブランドそのものを語る象徴になります。法的には登録できない色でも、人々の記憶の中では完全に「エルメスの色」として定着しました。その理由は、単なる色の印象ではなく、「偶然を美に変えた姿勢」にあります。
他社と同じ方向を向くのではなく、状況を受け入れ、そこから独自の美学を導き出す。これこそがデザインの本質であり、ブランドが永く輝き続ける理由です。
■デザインとは「偶然を必然に変える力」

(画像元:Soho Pari)
ハイブランドが皆ベージュを選んでいた時代に、偶然から生まれたオレンジ。それは単なる色の違いではなく、「思いもよらない選択を、デザインで価値に変えた」象徴でした。制約を恐れず、流行を追わず、今ある素材で最上をつくる。
エルメスのオレンジの箱は、デザインとは「偶然を必然に変える力」だと静かに教えてくれます。
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